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東京地方裁判所 昭和61年(ヨ)2222号 決定 1987年3月13日

申請人

川口春男

椿勇

高橋邦彦

田中康宏

川崎昌浩

新藤雄一

加藤正人

梅澤利男

後藤俊哉

櫻澤明美

森内猛

右訴訟代理人弁護士

葉山岳夫

菅野泰

清井礼司

内藤隆

山崎恵

竹之内明

市川昇

一瀬敬一郎

大口昭彦

土田五十二

鈴木俊美

広瀬理夫

被申請人

日本国有鉄道

右代表者総裁

杉浦喬也

右訴訟代理人弁護士

西迪雄

右訴訟復代理人弁護士

富田美栄子

右指定代理人

本間達三

室伏仁

西沢忠芳

江龍貞雄

矢野邦彦

和田芳男

主文

本件申請をいずれも却下する。

申請費用は申請人らの負担とする。

理由

第一申請の趣旨

一  申請人らは被申請人に対し、いずれも雇用契約上の権利を有する地位にあることを仮に定める。

二  被申請人は申請人らに対し、昭和六一年二月から本案判決確定に至るまで毎月二〇日限り別紙(略)請求金額記載の各金員をそれぞれ仮に支払え。

第二被保全権利について

当裁判所は、申請人らの本件申請はいずれも被保全権利について疎明がなく、かつ、これに代えて保証を立てさせることも本件事案の性質上相当でないとの結論に達した。

以下、その理由について述べる。

一  疎明資料及び審尋の結果によれば次の事実を一応認めることができる。

1  申請人らは、いずれも被申請人に雇用された職員であった者であり、かつ、国鉄千葉動力車労働組合(以下、「動労千葉」という。)の組合員である。被申請人(以下、「国鉄」ともいう。)は、日本国有鉄道法に基づいて設立された鉄道事業等を営む公共企業体である。被申請人は、申請人らに対し、同人らは動労千葉が行った後記争議行為に参画するとともに同闘争を指導し実施させたなどの理由で、公共企業体等労働関係法(以下、「公労法」という。)一七条一項、一八条により昭和六一年二月六日付けで解雇する旨の意思表示(以下、「本件解雇」という。)をし、以後、申請人らの雇用契約上の権利を争っている。

2  動労千葉は、被申請人の千葉鉄道管理局内の動力車に関係ある者で組織された労働組合であり、本件仮処分申請当時(昭和六一年二月)その組合員数は一〇六五名であって、本部のほか下級組織として一〇支部・青年部等を有している。

3  動労千葉は、昭和六〇年一一月二八日正午から翌二九日正午まで、千葉駅以西乗入れの旅客列車乗務員を対象とする指名ストライキ(以下、「本件争議行為」という。)を実施した。その経緯・態様等は次のとおりであった。

(一) 政府は、被申請人の経営する鉄道事業が財政的に破綻に瀕したため、その事業の再建を図ることとし、日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法を制定した。同法に基づき、被申請人の事業に関し効率的な経営形態の確立のための方針等を検討することを任務とする日本国有鉄道再建監理委員会(以下、「委員会」という。)が設立され、委員会は約二年余の審議を重ねた上、昭和六〇年七月二六日、内閣総理大臣に対し「国鉄改革に関する意見」(以下、「委員会の答申」という。)を述べた。その要旨は、<1>昭和六二年四月一日をもって被申請人の事業を六つの旅客鉄道会社と一つの貨物鉄道会社に分割して民営化し(以上の各会社を総称して、以下、「新事業体」という。)、鉄道事業を経営しなくなった被申請人は清算法人に改組すること、<2>同日の新事業体の要員規模は約一八万三〇〇〇人とし、委員会の答申時の要員が約二七万六〇〇〇人であることから生ずる約九万三〇〇〇人の余剰人員については、約二万人について希望退職を募り、約三万二〇〇〇人を旅客鉄道会社に移籍し、その余の約四万一〇〇〇人については清算法人に所属させた上、三年以内に対策を講じて全員が再就職できるよう万全を期すること、<3>被申請人の長期債務の処理などを内容とするものであった。なお、同法六条によれば、内閣総理大臣は、委員会の意見を受けたときは、これを尊重しなければならないとされており、そこで、政府は、以後、委員会の答申の実現をその重要課題とし、かつ、国民の理解と協力をも得て速やかに実現すべく推進した。また、被申請人も政府の方針に沿って委員会の答申の実現に向けて業務及び要員の合理化等の諸施策を講ずることとなった。

(二) 動労千葉は、昭和六〇年九月九日から一一日にかけて第一〇回定期大会を開催し、同大会において、<1>国鉄分割・民営化による一〇万人首切り合理化阻止、雇用安定協約完全締結、運転保安確立を闘争の中心に据えてストライキを含む第一波闘争を一一月下旬に設定して闘う、<2>第一波闘争の戦術の細部については本部執行委員会に一任する旨を決定した。これは、動労千葉が、委員会の答申につき、<1>余剰人員とされた約九万三〇〇〇人と貨物鉄道会社に移籍される約一万五〇〇〇人の合計約一〇万八〇〇〇人が新事業体移行に伴い合理化の対象となる、<2>被申請人の労働者が清算法人及び七つの新事業体に分離され、労働組合活動家と一般組合員が分断されて、組合活動が極めて困難な状況におかれることによって労働組合運動が解体され、その結果労働者に不利な労働条件が強制されることになる、<3>被申請人の事業が民営化されることによって国民の共有財産である国鉄資産の処分をめぐる利権争いが展開される、<4>以上の結果として、世界に冠たる国鉄の安全・確実な輸送の運転保安が著しく悪化することを意味するとして、委員会の答申に反対することとしたことによるものであった。

その後、動労千葉は、同年一〇月三日、第一回支部代表者会議を開催し、一一月末ストライキの実現に向けた当面の取組方針を決定し、また、同月三一日、拡大支部代表者会議を開催し、右ストライキ貫徹に向けた諸行動、組織態勢の強化などについて意思統一を図るとともに、一一・一七全国鉄道労働者総決起集会など、その後の取組等について確認した。さらに、動労千葉は、同年一一月一三日、第七回執行委員会を開催し、右ストライキ等争議戦術の大綱について確認・決定し、同月二一日、第三回支部代表者会議を開催し、戦術の基本として、<1>津田沼支部及び千葉運転区支部を拠点とし一一月二九日始発時から総武線千葉以西の全列車(ただし、貨物列車を除く。)を対象とする二四時間のストライキを実施する、<2>スト破り行為などがあった場合にはストライキ突入時間の繰上げ、ストライキ対象区の拡大(千葉駅に乗り入れる全列車)をもって対応する、<3>一一月二八日以降、全支部、全組合員によるストライキ突入態勢を確立するなどを決定し、同月二五日、執行委員長は、各支部長に対し指令第七号を発してストライキ実施等の準備態勢の確立を指示した。

(三) このような経過の中で、被申請人は、職員に対し違法な争議行為には参加しないよう点呼時に伝達するとともに、同月二〇日、千葉鉄道管理局長名で、公労法により国鉄職員のストライキ参加は禁止されており参加者は解雇されるものと定めていること、国鉄再建の瀬戸際にある時期に違法な行動に参加することに対しては、従来の例によらない厳しい処置を講ぜざるを得ないことなどを記載した警告文を掲示し、また、そのころ動労千葉所属の全職員宅に右警告文を書留郵便により送付した。さらに、同月二七日、被申請人総裁は、動労千葉執行委員長に対し、文書により、被申請人の置かれた状況とその使命を十分に認識し、業務の正常な運営を阻害する違法な闘争計画を中止するよう申し入れるとともに、違法な闘争が実施された場合には、その指導者及び職員個人の行為に対して厳しくその責任を追及せざるを得ないことなどを警告した。

(四) しかし、動労千葉は、同月二七日、第九回執行委員会を開催し、二九日に予定されていたストライキの実施を当局のスト破りに対抗するとして二八日に繰り上げ、二八日正午から千葉以西に乗り入れる全旅客列車の乗務員を対象とする二四時間の指名ストライキに突入することを決定し、翌二八日、執行委員長は、各支部長に対し指令第八号を発し、各支部は同日一二時以降千葉駅以西に乗り入れる全旅客列車の乗務員を対象とする指名ストライキに突入すること、各支部は右以降闘争集約時までの間ストライキ対象外の全組合員による非協力・安全確認行働を実施することなどを指示した。そして、動労千葉は、ストライキの拠点となる津田沼支部に本部執行副委員長水野正美と本部執行委員片岡一博を、千葉運転区支部に本部執行副委員長山口敏雄と本部執行委員西森厳を闘争最高責任者として派遣し、前記のとおり二八日正午から翌二九日正午まで二四時間にわたり本件争議を実施した。

(五) 本件争議行為により生じた列車の運行に対する影響は次のとおりであった。

(1) 二八日(正午から終電まで)

運休 旅客列車 総武快速線七一本(特急三二本・快速三九本)

総武緩行線七二本

その他二八本(特急九本・快速一九本)

遅延 旅客列車 総武快速線六一本(最高三一分、合計三三三分)

総武緩行線一〇八本(最高二五分、合計七三四分)

その他五〇本(最高二〇分、合計二七二分)

貨物列車 総武快速線二本(最高四分、合計七分)

なお、総武快速線と千葉駅以東相互直通列車については、各線重複計上している。

(2) 二九日(始発から運転開始まで)

運休 旅客列車 総武快速線二〇八本(特急六四本、快速一四四本)

総武緩行線三三一本

その他一五三本(特急六四本、快速五七本、ローカル三二本)

貨物列車 総武快速線二八本

その他三六本

遅延 旅客列車 総武快速線一八本(最高一〇分、合計三八分)

総武緩行線三一本(最高一三分、合計一五四分)

その他四本(最高二八分、合計一二六分)

貨物列車 総武快速線四本(最高五三二分、合計一三九八分)

なお、総武快速線と千葉駅以東相互直通列車については、各線重複計上している。

また、本件争議行為の間の二九日未明、首都圏と関西などの八都府県で、国鉄線の運行を支える通信ケーブルや信号ケーブルが合計三三箇所にわたり切断されたり、総武線浅草橋駅が火炎びんにより放火されたりする同時多発ゲリラ事件が発生した。このため、首都圏の全国電など二〇線区と関西の主要二線区で、始発から運転ができなくなり、通勤、通学の足が奪われ、臨時休校があいつぎ、私鉄各線、ターミナル駅、幹線道路は記録的ラッシュとなり、大混乱を生じた。総武快速・緩行線が運転を再開したのは同日午後三時過ぎ、また、成田線が運転を再開したのは午後一時四五分であった。そして、動労千葉は、「われわれは抑えがたい怒りを発揮し、警察や当局の圧殺反動をうち破って、第一波ストをうちぬいた。」「来年三月第二波ストをかまえる。不当弾圧があれば、暮れ正月を返上し、団結をかため、分割・民営化反対でたたかいつづける。」と勝利のコメントを発表した。

(六) 本件争議行為に対しては、被申請人の置かれた厳しい現状を弁えない蛮行として各新聞の社説等には参加者の責任を厳しく追及するよう求めるものが多くみられた。

4  申請人らの動労千葉における地位と本件争議における役割

(一) 申請人新藤は、昭和六〇年九月一日以降、本部青年部長兼本部特別執行委員の地位にあり、動労千葉の中にあって指導的立場にあった者の一人である。すなわち、本部特別執行委員は、議決権こそ有しないものの本部執行委員会等の組合機関に出席し発言する権限を付与されており、また、本部青年部長は、本部青年部の最高責任者であるところ、本部青年部は、青年組合員の組合活動を推進する組織であって本件争議行為を最先頭において闘ったものである。実際、申請人新藤自身、本部青年部長就任の挨拶に際し、青年部は最先頭でストライキ貫徹へ闘い抜く旨、また昭和六〇年一一月一七日、動労千葉の主催により開催された全国鉄道労働者総決起集会において、「青年部はこの二箇月ストライキを全青年部・全組合に訴え闘い抜いてきた。このストライキは青年部が先頭に立って闘うストライキである。」などとその決意を述べ、本件争議行為に至る経過の中でこれを積極的に支持し、指導的役割を果した。

(二) 申請人森内は、昭和六〇年九月の前記第一〇回定期大会に至るまでは本部特別執行委員の地位に、また、同年一〇月一一日以降は同日開催の成田支部定期大会において成田支部支部長に選任されてその地位にあった者であり、動労千葉の中にあって指導的立場にあった者の一人である。右支部大会において、成田支部は、一一月末を第一波とする数次のストライキに全員が火の玉となって立ち上がることを満場一致で決定し、また申請人森内は、「新執行部は一一月ストライキを全力で闘います。みんなも執行部についてきて欲しい。私は体の続く限り最先頭で闘う決意です。」などと述べ、本件争議行為に至る経過の中でこれを積極的に支持し、成田支部長就任以降は主に成田支部に関するものの、それのみにとどまらず、同支部長就任の前後を通じて本件争議の全般にわたって指導的役割を果した。

(三) 申請人櫻澤は、前記第一〇回定期大会に至るまで本部特別執行委員であった者であり、動労千葉の中にあって指導的立場にあった者の一人であるが、一一月二八日午前一一時四二分ころ、被申請人職制が動労千葉組合員小沢天任に対し臨時仕業が生じたからこれに乗務するよう命じた際、右職制に対しその理由は本件争議行為に伴うものであることは明らかなのに臨時仕業発生の理由は何かなどと執拗に抗議し、さらに、同日午後一〇時ころ、被申請人職制により千葉運転区運転管理室からの退去命令を受けたにもかかわらず、これに抗議して従わず、争議行為を積極的に支持、推進した。

(四) 申請人田中は、前記第一〇回定期大会に至るまで本部青年部長兼本部特別執行委員の地位にあり動労千葉の中にあって指導的立場にあった者の一人であり、また、昭和六〇年一〇月一五日以降は同日開催の津田沼支部大会において同支部執行委員に選任されてその地位にあり、本件争議行為の拠点支部の一つとなった同支部の中にあって指導的立場にあった者の一人である。右支部大会において、同支部は、「栄光ある津田沼こそ全支部の牽引車となろう。」と確認し、満場一致で同支部が火の玉となって一一月ストライキへ総決起する方針を決定したが、申請人田中は、これを積極的に支持、推進し、また、一一月二八日午後一時過ぎころ、指導員室において江沢助役を他の組合員数名とともに取り囲み、旅客列車に指導員を乗務させて運行したことに対し大声を上げて執拗に抗議した。

(五) 申請人椿、同高橋、同川口は、いずれも前記津田沼支部大会において同支部執行委員に再任されてその地位にあり、同支部の中にあって指導的立場にあって、本件争議行為を積極的に支持し、その拠点支部役員として津田沼支部の取組全般にわたって企画・指導し、推進した。

また、申請人椿は、一一月二八日・二九日の両日、同高橋及び同川口は、同月二八日、本件争議行為に参加して所定の勤務への就労を拒否した。

(六) 申請人加藤、同梅澤及び同後藤は、いずれも昭和六〇年一〇月一九日開催された千葉運転区支部大会において同支部執行委員に選任(同加藤及び同梅澤は再任)されてその地位にあり、本件争議行為の拠点支部の一つとなった同支部の中にあって指導的立場にあった者らである。右支部大会において、同支部は動労千葉の最先頭で一一月ストライキに決起して闘う方針を満場一致で決定した同人らは、このような指導的地位にあって本件争議行為を積極的に支持し、その拠点支部委員として千葉運転区支部の取組全般にわたって企画・指導し、推進した。また、申請人加藤は、一一月二八日、同梅澤及び同後藤は同月二八日・二九日の両日、本件争議行為に参加して所定の勤務への就労を拒否した。

(七) 申請人川崎は、前記津田沼支部大会に至るまで同支部執行委員の地位にあり、また、同支部大会において同支部青年部長に選任されて、以後、これと同支部特別執行委員を兼ねた地位にあり同支部の中にあって指導的立場にあった者の一人である。また、申請人川崎は、前記全国鉄道労働者総決起集会において、「一一月二九日のストライキを絶対に守り抜くという立場から最先頭で闘う。」などとその決意を述べ、また一一月二八日午前一一時五五分ころ、同支部組合事務所付近で開催されたストライキ突入集会において本部派遣役員水野正美に次いで集会開始の挨拶をするなどして本件争議行為を積極的に支持し、推進した。

二  右認定したところにより申請人らに対する本件解雇の効力について判断する。

1  動労千葉の本件争議行為が公労法一七条一項の禁止する公共企業体である被申請人の業務の正常な運営を阻害する行為に、また、申請人らの行為も同項の禁止する行為にそれぞれ該当することは明らかである。

2  申請人らは、公労法一七条一項及び一八条の各規定は憲法二八条に違反すると主張する。しかし、公労法一七条一項の規定が憲法二八条に違反しないことは、既に最高裁判所の確定した判例の明示するところ(最高裁判所大法廷昭和五二年五月四日判決・刑集三一巻三号一八二頁参照)であって、当裁判所もこれを正当と考える。そして公労法一七条一項が公共企業体の職員の争議権を全面的に禁止したからといって憲法二八条に違反しない以上、その禁止に違反した職員に対し公労法一八条により解雇の不利益を課することとしても憲法二八条に抵触することはないというべきである。

なお、申請人らは、被申請人は動労千葉との団体交渉を拒否し、また、雇用安定協約の締結を拒否しているから、争議行為禁止の代償措置が機能せず、したがって、本件争議行為に対し公労法一七条、一八条を適用し申請人らを解雇することは、その限りにおいて違憲・無効である旨主張する。しかし、疎明資料によれば、被申請人は、動労千葉との間において、争議行為の設定が決定された動労千葉第一〇回定期大会以降、本件争議行為に至るまでの間においても、動労千葉の申入れに応じて、委員会の答申に対する被申請人の見解、業務・賃金・運転保安・組織関係等の諸問題、雇用安定協約締結の問題等、少なくとも団体交渉事項については、団体交渉を開催した上、口頭又は書面をもって誠実に回答していると一応認められるし、また、雇用安定協約を締結するか否かは、争議行為禁止の代償措置が機能しているか否かとは無関係というべきであるから、結局、申請人らの右の主張は採用できない。

3  申請人らは、本件解雇は被申請人の裁量権を濫用したものであるから無効である旨主張する。

本件争議行為は、国鉄の分割・民営化阻止を主目的とするものであるが、この問題は、日本国有鉄道法の改正問題として国会での審議により決定されるべき問題であって、被申請人と動労千葉の団体交渉によって解決することのできない問題であることは明らかである。このような目的のためにストライキを行うことは、自己の政治的主張を実力で貫徹しようとするものであって、国会の権威を否認するものであり、その違法性は極めて重大というべきである。そして、申請人らは、動労千葉がこのような違法ストを敢行しようとした際、本部又は支部役員として前認定のとおり、当局による事前の厳しい警告をも全く無視して積極的に参加し、これを推進したもので、その責任は重大である。これらの点と、本件ストライキが前認定のように国民生活に重大な支障を与えたこと、これに対する世論の動向等を総合的に考慮すると、本件解雇は、裁量権の濫用とは認められない。また、申請人らは、本件解雇が、全国規模で八日間にわたって行われたいわゆるスト権ストにおいてさえ公労法解雇が一五名に過ぎなかったというような過去の争議行為における処分の前例と対比して、解雇者が二〇名にものぼる点で厳格に過ぎると主張するが、解雇権の行使が裁量の範囲を逸脱しているかどうかは、ストライキの規模、行為者の組合における地位等のみならず、行為時の客観的社会状況、行為に対する社会の評価等も総合的に考慮して決せられるべき問題であって、本件においては、申請人らの行為に対する社会全体の厳しい非難を考慮すると、前例と対比しても、本件解雇が社会通念に照らし、不相当なものとは認められない。

三  以上のとおりであるから、申請人らの本件申請は、いずれもこれを失当として却下し、申請費用の負担について民事訴訟法八九条、九三条一項本文を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 白石悦穂 裁判官 林豊 裁判官 納谷肇)

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